植物の香りと恵みを、水とともに暮らしへ
植物の香りに包まれると、ふっと肩の力が抜けたり、深く息を吸いたくなったりする。
ローズ、ラベンダー、ハーブ、樹木……。
私たちの身のまわりには、さまざまな香りを持つ植物があります。
そんな植物の香りや水溶性成分を、植物からゆっくり取り出していく方法のひとつが、「植物蒸留」です。
植物蒸留は、単に「香りを取り出すための技術」ではありません。
植物を見て、触れて、香りを感じ、蒸気になり、水になっていく過程を五感で楽しむ。
そして、できあがった芳香蒸留水や精油を、また日々の暮らしの中で植物とともに楽しむ。
私は、そんな植物との時間そのものに、植物蒸留の魅力があると思っています。
植物蒸留って、どんなもの?
植物蒸留とは、簡単にいうと、植物に水蒸気をあてて、植物の香りの成分などを取り出す方法です。
たとえば、ラベンダーを蒸留するとき。
蒸留器の中にラベンダーを入れ、水を加熱して蒸気をつくります。
その蒸気が植物の中を通ることで、香りの成分が一緒に運ばれていきます。
そして、冷やされて液体に戻ると、
精油と芳香蒸留水
という2つのものが得られます。
精油は植物の芳香成分が濃縮されたもの。
一方、芳香蒸留水は、植物の香りをほんのり含んだ水です。
同じ植物から生まれるものですが、それぞれ香りも使い方も違います。
「精油」と「芳香蒸留水」はどう違う?
植物蒸留というと、「精油をつくるもの」というイメージがあるかもしれません。
もちろん精油は蒸留によって得られる大切な恵みのひとつです。
でも、蒸留会でぜひ注目してほしいのが、芳香蒸留水です。
精油ほど香りが強くなく、植物そのものを思わせるような、やさしい香りをしています。
化粧水として。
ルームミストとして。
お風呂上がりのボディケアに。
あるいは、朝の空間にシュッとひと吹きして、植物の香りを暮らしに取り入れる。
芳香蒸留水は、精油よりも日常に取り入れやすい植物の恵みのひとつです。
蒸留の魅力は「できあがったもの」だけではない
植物蒸留の時間には、もうひとつ大きな魅力があります。
それは、植物が少しずつ姿を変えていく過程を見られること。
摘みたての植物を蒸留器に入れる。
火を入れる。
少しずつ蒸気が立ち上がる。
部屋の中に、植物の香りが広がっていく。
そして、ぽたり、ぽたりと芳香蒸留水が落ちてくる。
植物だったものが、香りと水になって私たちの手元に戻ってくる。
その様子を見ていると、
「植物って、こんなにたくさんのものを私たちに与えてくれているんだ」
と、改めて感じます。
季節の植物を「香り」として残す
植物には、それぞれの季節があります。
春には春の植物。
夏には夏の植物。
秋には秋の植物。
冬には冬の植物。
植物蒸留の面白さは、その季節にしか出会えない植物を、香りとして残せることにもあります。
たとえば、日本のバラとも呼ばれるハマナス。
可憐な花だけでなく、果実にもビタミンCなどの成分が含まれています。
そんな植物を実際に手に取り、香りを感じ、蒸留してみる。
すると、植物図鑑で名前を知るだけではなく、「この植物が、この土地で、この季節に生きている」
ということまで感じられるようになります。
日本の植物を、もっと身近に
私が植物蒸留を通して伝えていきたいことのひとつが、日本にある植物の魅力です。
海外から輸入されたハーブや精油には、もちろん素晴らしいものがたくさんあります。
でも、私たちの暮らしのすぐそばにも、香り豊かな植物がたくさんあります。
森に生える樹木。
庭に咲く花。
野に咲く野草。
昔から日本人が暮らしの中で利用してきた植物。
そうした植物に改めて目を向けてみる。
すると、いつもの道や庭が、少し違って見えてきます。
「これはどんな香りがするんだろう?」
「蒸留したら、どんな水になるんだろう?」
そんな小さな好奇心が、植物との距離を近づけてくれます。
植物を「消費する」のではなく、植物と暮らす
植物療法は、植物の力を借りながら、自分自身の心身をいたわっていく方法です。
だからこそ私は、植物をただ「効能のあるもの」として捉えすぎないことも大切にしています。
香りを嗅いで、心地よいと感じる。
植物に触れて、季節を感じる。
自分で蒸留して、その植物についてもっと知りたくなる。
そして、できあがった芳香蒸留水を暮らしの中で使ってみる。
そうやって植物との関係が少しずつ深まっていく。
「植物を使う」のではなく、「植物と暮らす」。
私は、植物療法の魅力は、そんなところにもあると思っています。
蒸留は、小さな「森への入口」
私が植物蒸留を好きなのは、蒸留そのものが目的ではないからです。
蒸留をきっかけに、
「この植物はどこから来たんだろう?」
「どんな場所で育っていたんだろう?」
「昔の人は、どうやって使っていたんだろう?」
そんなふうに、植物の背景に興味が広がっていく。
そして実際に森や畑へ足を運び、植物に触れ、香りを感じる。
家に帰ってからも、蒸留した芳香蒸留水を使いながら、その日の植物を思い出す。
そんなふうに、
森で植物に出会う
↓
蒸留して香りを持ち帰る
↓
暮らしの中で植物を楽しむ
↓
また植物に会いに行きたくなる
という循環が生まれたら素敵だなと思っています。
植物蒸留は、忙しい毎日に「立ち止まる時間」をつくる
仕事や家事、さまざまな役割に追われていると、私たちはつい「効率よく」「早く」と考えてしまいます。
そんな日常の中で、植物蒸留は少し不思議な時間をつくってくれます。
植物を準備して。
水を入れて。
火をつけて。
香りが立ち上がるのを待つ。
すぐには完成しません。
でも、その「待つ時間」が心地よかったりする。
植物の時間に、自分の時間を合わせていく。
その感覚が、忙しい現代の暮らしにはとても大切なのではないかと思います。
植物の香りを、暮らしの中へ
植物蒸留で生まれた芳香蒸留水は、特別な日にだけ使うものではありません。
朝、顔を洗ったあとに。
仕事の合間のリフレッシュに。
夜、お風呂上がりに。
眠る前の空間に。
ほんの少し植物の香りを取り入れるだけで、いつもの暮らしが少し豊かになります。
植物療法というと、何か特別なことをしなければならないように感じるかもしれません。
でも、本当はもっとシンプル。
植物を感じる時間を、暮らしの中に少しずつ増やしていく。
それも、植物療法のひとつの形だと思っています。
植物と、人と、暮らしをつなぐ
植物蒸留は、植物から精油や芳香蒸留水を取り出す技術です。
でも、私にとってはそれだけではありません。
植物に触れること。
香りを感じること。
季節を知ること。
土地を知ること。
自分の心と身体に目を向けること。
そして、植物の恵みを日々の暮らしに取り入れること。
そのひとつひとつがつながって、植物との新しい関係が生まれていく。
そんな時間を、これからも届けていきたいと思っています。
植物のある暮らしは、私たちの毎日を少しだけゆっくりにしてくれる。
森で出会った植物の香りを、家に持ち帰る。
そして、その香りを感じながら、また次の季節に植物に会いに行く。
植物蒸留から始まる、小さな循環。
それが、私の目指している「植物とともに暮らす」という世界です。
実際に植物蒸留を試してみませんか?
